凹面鏡と凸面鏡を使った新しいAdvanced KBミラーの開発
これまでのAdvanced KBミラー光学系では,凹面の楕円(双曲)筒ミラーを用いていた.この光学系では,ミラー自身の長さに邪魔されて焦点距離を短くできないという欠点があった(主面の位置は楕円鏡と双曲鏡の間).さらに,KBミラー特有のミラーの直列配置のため,手前のミラーに邪魔されて焦点距離がさらに長くなることも欠点であった.この結果,限られたスペースでは拡大倍率が大きくできなかった(拡大倍率を大きくするためにはカメラ長をとても長くするしかなかった).この問題を解決するために,凹面鏡と凸面鏡を組み合わせたAdvanced KBミラーを提案した.凹面鏡と凸面鏡を組み合わせることで,主面の位置を試料面に近づけることができ,この結果,実効的な焦点距離を短くすることができる.例えば,2mの距離で100倍以上の拡大倍率を有する結像光学系を設計可能となった.これを利用することで,実験室や工場のような限られたスペースの中で高分解能X線顕微鏡を構築することができる.本光学系を集光光学系として利用すれば,短いビームラインでも100nm以下の集光を達成できる.さらに,SPring-8-IIのような超低エミッタンス放射光源を仮想光源スリットを入れることなく50nm以下まで集光可能である.このように,これまでのKBミラー・AKBミラーの欠点を克服できる画期的な光学系である.