研究方針
当研究室では,世界最高性能のX線顕微鏡を開発し,10nm以下の(電子顕微鏡に匹敵する)空間分解能の達成を目指しています.そのために,X線ミラー,形状可変ミラー,ミラー形状修正技術,X線波面計測技術の開発・高度化を進めています.特に,極限性能のX線光学素子の開発は困難を極めるため,形状可変ミラー+機械学習を用いたアダプティブX線顕微鏡の実現を積極的に推進しています.基礎となるX線ミラーからX線顕微鏡,そしてそのアプリケーションまでを一貫して研究することで,世界最高性能のX線顕微鏡の実現を目指しています.
最近の研究内容
アダプティブX線顕微鏡
結像型X線顕微鏡は,結像光学系と照明光学系,X線カメラによって構成されたシステムで,試料像をX線カメラ上に結像することができます.試料を走査する必要がないため,究極的には短時間の観察が可能です.一方で,結像光学系は複数の反射面が必要になるためその開発が難しく,大開口数ミラーでは作製誤差による分解能の劣化が大きな問題となります.この問題を解決するために,自由に形状を制御できる形状可変ミラーを用いたアダプティブ結像光学系とそれを備えたアダプティブ顕微鏡を開発しています.
⇒圧電単結晶を使った高精度形状可変ミラーの開発
⇒アダプティブX線顕微鏡のファーストデモ実験
デコンボリューション顕微鏡
X線顕微鏡の分解能悪化の原因を取り除く方法は,根本原因となるミラー上の形状誤差を取り除く以外に,撮像後に計算によって取り除くことも可能です.このような方法はデコンボリューションと呼ばれ特に可視光領域では様々な手法が提案されています.しかし,X線領域に適用できる方法はほとんど存在せず,また,適用できたとしても実験が困難であることが問題です.X線領域でも容易かつ高精度にデコンボリューションできる方法を開発しています.
⇒X線フーリエタイコグラフィの開発
⇒機械学習と試料面内回転を用いた新デコンボリューション法の開発
極薄モノリシックバイモルフミラー
形状可変ミラーの更なる可能性(変形量,安定性,作製しやすさ)を求めて,圧電単結晶からなる極薄かつモノリシックな形状可変ミラーを開発しています.通常の形状可変ミラーはミラー基板と圧電セラミックスを接着して作製しますが,この方法では厚みは数mm以上となってしまいます.圧電単結晶のみを使ったモノリシックなバイモルフ型形状可変ミラーの作製方法を研究しています.