グレーチング干渉計(Grating interferometer)
X線領域でも干渉計を構築することは可能である.グレーチング干渉計(タルボ干渉計)は,シンプルかつ容易に構築できるため近年注目されている.下図は,集光光学系の波面を計測するためによく用いられる,1つの位相回折格子とX線カメラで構築されたグレーチング干渉計である.グレーチング干渉計では,回折格子によって発生する回折光同士の干渉を計測する.この干渉縞は,回折格子からある決められた距離で観察すると,回折格子と同じ周期パターンになる(Talbot効果).そのため,この干渉縞は自己像とも呼ばれる.集光光学系で用いた場合,発散光を用いるため,回折格子を通過した光が自動的に拡大される.この結果,自己像も拡大され,カメラで容易に検出できる(通常のタルボ干渉計では,自己像は計測できないくらい細かい.吸収格子を追加し,自己像とのモアレ縞を発生させ,これをカメラで記録する).この自己像は波面の乱れによって変調され,不規則な縞として観察される(目ではわからないほど微小な変化).これを縞走査法やフーリエ変換法で解析し,波面の乱れを抽出する.
我々はこれまでの研究で,形状可変ミラーによって乱された波面をλ/10以上の精度で検出することに成功している(下図).また,X線自由電子レーザー用の集光光学系の性能評価にも応用し,フェムト秒のパスル幅を持つX線レーザーに対して,シングルショットで波面計測を実施することに成功した.