ペンシルビーム法(Pencil beam method)

X線の波面を計測する方法には,タルボ干渉計(グレーチング干渉計),タイコグラフィー(Ptychography),位相回復法,シャックハルトマン(Shack-Hartmann)波面センサー,X線ペンシルビーム(Pencil beam)法などがある.この中でX線領域で利用でき,比較的簡単かつ自動化が容易なペンシルビーム法について説明する.

schematic of pencil beam scan

ペンシルビーム法では,スリットやピンホール等によって形成した細いX線を被検ミラーなどに反射させ,その光の行き先をカメラで記録する.スリットを動かすなどして,被検面全体をスキャンしながらすべての光の行き先を記録することで,ミラー領域内のスロープエラー分布を調べる.この方法は通常は可視光で利用するLTP(Long trace profiler)をX線で実施したものとよく似ている.ミラーが集光ミラーである場合,理想的には光は焦点で1点に集まる.もし,光の軌道が1点に集まらなかった場合,スロープエラーΔθは,集光面での軌道のずれΔxと,反射点と焦点までの距離Lを使って,

Δθ=0.5×Δy/L

で表される.軌道のずれΔxは,焦点面上に配置したX線カメラで,ビームの重心のずれを測定して決定する.重心ずれ検出の計測精度は,カメラの分解能,ボケとS/Nで決まる.我々が開発したビームモニター(シンチレータ,CMOSカメラ,レンズで構成)は,10nmのビーム重心変化を検出できるため,約50nrad以下のスロープエラーを検出可能である.形状可変ミラーの制御に用いることで,形状可変ミラーの変形を誤差2nmで制御することに成功している.

研究成果の一例(論文・解説記事)

  • 【論文】高精度ペンシルビーム法を開発.(Rev. Sci. Instrum.)
  • 【論文】ペンシルビーム法の精度を検証.(Synchrotron Radiation News)