ハイブリッド型AKB(AKB(I)とAKB(III))を用いたX線顕微鏡の開発

コンパクト,色収差なし,高分解能なX線顕微鏡を実現するために,AKB(I)とAKB(III)を組み合わせたハイブリッド型AKBミラーを提案した.AKB(I)は凹面+凹面で構成されており,AKB(III)は凹面+凸面で構成されている.AKB(I)は一体型ミラーとして作製できるため,複雑なアライメントをすることなく利用できるという大きな特徴がある.一方で,焦点距離を短くすることが難しいため,特にAKBミラー光学系における焦点から遠いミラー対への適用が難しいという問題があった(焦点距離が長くなり拡大倍率が小さくなるため).AKB(III)は凹面鏡と凸面鏡の組み合わせの効果によって,焦点距離を短くすることができる.ただし,一体型ミラーを作製できないため,それぞれのミラーを作製後,精密なアライメントが必要となる.しかし,AKB(I)とAKB(III)を組み合わせることで,それぞれの欠点を補うことができるため,ハイブリッド型AKBミラーは実用的な光学系である.

本光学系を実証するために,ハイブリッド型AKB(全反射ミラー)を設計・作製した.本拡大結像光学系の全長は約2mであって,拡大倍率は約40,開口数は0.001である.SPring-8にて15keVのX線を用いてX線顕微鏡のデモ実験を実施した.下図のようにミラーを精密に配置し,テストチャート像を拡大結像した.下図(a)ミラーの写真,下図(b)は光学系全体の構成(論文の図を転載)を示している.

下図はテストチャートの拡大結像像である(論文の図を転載).中心部の50nmの構造まで鮮明に可視化できている(図中のスケールバーは2μm).また,33.5時間後の安定性を評価したところ,像劣化は確認されなかった.以上より,本光学系の性能と実用性の高さを実証することに成功した.

研究成果の一例(論文・解説記事)

  • 【論文】ハイブリッド型AKBミラーを用いた新しいX線顕微鏡の提案.(Optica)